所得税法第9条1項10号

2日にわたって述べた、所得税・譲渡所得税の問題点については、
以前からもずっと、言われ続けていたらしい。
しかし、「破産法」のテキストも、「国税通則法」のテキストも、
所得税法第9条1項10号ができたので、
今日では問題は起こらなくなった」と言っている。
でも、問題は現実に起こっている。なぜか?
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所得税法第9条1項10号:
「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合における
国税通則法第2条第10号に規定する強制換価手続による資産の譲渡による所得
その他これに類するものとして政令で定める所得」は、所得税を課さない。
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不動産を持ったまま破産し、あとは破産管財人にまかせる(強制換価手続)
といった場合は、問題なく非課税になる。
しかし、通常の経営者が白旗を上げるのは、
自分がやれることはすべてやった後である。
しかも競売になったら、任意に売却する場合より安くなってしまう
というのは一般的な常識である。(債権者に渡る金額が低くなる)
不動産があるのに破産申立をするのは、設定されている抵当権等の金額以上では、
売却することができないことが明らかな場合だけである。
譲渡所得税が破産者にかかるとわかった時に、破産管財人が、
「余計なことをしたからで、全部管財人にまかせれば問題なかったのに・・・」
と言ったが、それは後からの結果論であり、現実には意味がない。
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でも、強制換価手続によらなくとも、資力喪失状態なら適用されそうである。
すぐに自己破産しなければならない程なら、資力喪失状態ではないか。
しかし、税務署の見解は少し異なる。
売ったお金の一部でも弁済以外に使ったら、資力喪失状態とは判定しない。
(令第26条、基通9-12の4)
一見もっとものような気はするが、
弁済ではなく、会社の資金繰りのために使ってもダメなのである。
10億の借金があり、土地を10憶で売って全部返済にあてれば税金はゼロだが、
ちょっと頑張って10憶5千万で売り、5千万を会社に投入したとたん、
税金はこの5千万だけではなく、返済で消えた10憶も含む全体にかかり、
突然2億を超える税金がかかってくる・・・それっておかしくない?
なんのために売るのか? お金を作って、資金繰りを良くするためである。
ならば、この条文は、本質的な問題解決にはなっていないのではないか。